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剣世炸 novel site 〜月明りの少女〜

月明りの少女

原案:剣世 炸/加賀 那月
著:剣世 炸


Episode4「王都陥落」 第2話 〜ワイギヤの将軍〜

 レイスから王都陥落の一報を聞いた俺たちは、レイスがそれを確認したという高台までやってきた。

 途中、王都から脱出してきたと思われる、多くのフォーレスト国民とすれ違った。それらの多くは、火災をやっとの思いで逃れたことが想像できる程に、着衣はボロボロだった。

「ああ…森に囲まれた美しい都で知られるフォーレストの城下町が燃えている…」

「ガイーラさん…」

「主…」

「…」

「ここに来る途中、多くの国民とすれ違ったが、誰に聞いても『何も知らない』の一点張りだった…だが、城壁には確かにワイギヤ軍の軍旗が掲げられている…」

「それは、ワイギヤ教の真実を国民は知らないから、自分が信じる宗教の軍隊の言動に対して、文句が言えないからではないかしら?」

「…確かに、その通りかも知れない…もしかしたら、ワイギヤ軍は街を占領しながらも『この騒ぎは一時的なもので、治まったら元の生活に戻れるようにする』的なことを、城下町で流布しているのかも知れない」

「いずれにしても、城下町まで確かめに行く必要があるだろうな…」

「アコードの言う通りだ。主、行きましょう!」

「…全員考えていることは、同じか…」

 ガイーラの言葉に、その場の全員が頷く。

「ガイーラさん!行きましょう、城下町に!」

 アルモの言葉にガイーラは力強く頷き、フォーレストの城下町に向かい走り出した。

「ここから城下町まで、このまま走り抜ければ小半時もあれば到着できるだろう」

「だが、途中ワイギヤ軍に出くわすとも限らないのでは?」

「確かにその通りだけど…とりあえず急いで城下町まで走りましょう?アコード」

「…アルモ…アコードが心配していたことが、的中してしまったみたいだ…」

「…レイス!敵か!?」

「はい、主。この先の竹薮の中、右に1、左に2…」

「3対4か…」

「ガイーラ。右の1を俺とアルモに引き受けさせてくれないか?」

「アコード…」

「フォーレスタでの戦闘、アルモから聞いているよ…いいだろう!左の2は俺とレイスに任せてくれ」

 そういうと同時にレイスに合図を送ったガイーラは、その進路を左に傾けた。それにレイスも続く。

「さぁ、大口を叩いたからには、この任務、失敗できないわよ!」

「分かっているさ!」

 走りながら各々の武器を鞘から抜き去り、目の前に構えた俺とアルモは、竹薮の中の人影に斬りつけた。

“キーン”

 剣と剣がぶつかる甲高い音に、上方にとまっていた無数の鳥が恨めしそうな泣き声を発しながら飛び立つ。

 竹薮の中にいた人物は、俺とアルモの同時の一撃をグレートソードと呼ばれる大剣で防いだようだ。

「…司祭様の言っていた通りになったみたいだな…」

 そう言い捨てると、俺とアルモを力任せに弾き返す。

「黄色い髪の毛に、ほのかに輝く剣…間違いない、お前、アルモだな!」

「…なぜ、私の名を!?」

「それは、俺がワイギヤ教軍の12将の一人、パジラ様だからさ!お前、自分がワイギヤ教団から指名手配になっていること位、知らない訳がなかろう…」

「それは…」

「それから、横にいる黒髪…お前のような指名手配者はいなかったはずだが…」

「パジラ、と言ったか…通してくれと言って、素直に通してくれるはずは…ないよな」

「はっはっはっ!黒髪、面白いことを言ってくれる!この俺が、目の前の罪人を放置するとでも思うたか!」

「アルモは、罪人なんかじゃない!世界を、あるべき姿に戻そうとしているだけじゃないか!」

「…黒髪!知ったような口ぶりだな…こりゃ、余計お主達を放置する訳にはいかなくなったな…」

「アコード!来るわよ!!」

「遅い!」

 刹那、俺はパジラからの一撃をすんでの所で防ぐ。

 すると、ショートソードと接する部分のグレートソードの刃が“パリッ”という音と共に、数ミリ欠ける。

「ほほう、黒髪もなかなかやると見える…しかも、そのショートソードには魔法が込められているようだ…魔法剣を操れるのは、わが軍にも指折る程しか居らぬというのに…」

 このままではグレートソードが真っ二つになると判断したのだろう。パジラは剣を引くと、数歩後ろへと下がる。

「やぁーーー」

「!!!」

 雄叫びともとれる掛け声と共に、今度はアルモがパジラに切るかかる。

「おっとと」

“ヒュン”

 アルモの一撃は、すんでのところでパジラに避けられ、空を切る。

「このグレートソードを叩き折るつもりだったのだろうが、そうはさせぬぞ!」

「せっかく、アコードが作ってくれたチャンスだったのに…」

 アルモもグレートソードにできたヒビに気が付いていた。

「魔法剣の使い手が2人もいては、教祖様から賜ったこの剣が持たぬ…。アルモと黒髪よ。この勝負、預けたぞ!」

 そうパジラが言い放った次の瞬間、突風が辺りを包み込み、パジラは姿を消した。

「待ちなさい!パジラ!!」

「…どうやら逃げられたみたいだな…」

「…ガイーラさんの方が気になるわ。早く合流しましょう!」

「ああ!」

 パジラを退却させた俺たちは、ガイーラ・レイスと合流すべく、竹薮の反対側へと走り出した。