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剣世炸 novel site Valkyrie of Moonlight〜月明りの剣と魔法の杖〜

Valkyrie of Moonlight〜月明りの剣と魔法の杖〜

原案:剣世 炸/加賀 那月
著:剣世 炸


Episode5「帰郷」 第6話 〜真実を求めて〜

 レイスと別れ、フォーレストの城下町を後にした俺とアルモは、アルモの生家があるサプコッタ大陸に向かっていた。

 サプコッタ大陸は、フォーレスト大陸の西に位置し、周囲を高い山々で囲まれた大地だ。

 大陸の50%を山林、25%を山林に囲まれた湖が占め、残り25%の平地や森林に拠点を築き、人々は生活をしている。

 古の剣を育ての父から譲り受け生家を飛び出したアルモは、狼の群れに襲われそうになっているところをガイーラに助けられ、いつも買い出しに行っていたというナヤラーンの町に行き、旅支度を整えたという。俺とアルモは、その町に向かおうとしているのだが…

“ガサゴソ…ゴソガサ…”

 道具袋から、一枚の綺麗な布を取り出すアルモ。

「…その布は…確かフォーレスタ近くの寺院に潜入する時に使っていた…」

「そう。包んだものの魔力を遮断する布よ」

“ガサゴソ…ガソガサ…”

「はい。アコード。あなたの分」

「え!?俺の?」

「そうよ。あなたの『ショートソード』も魔力を帯びているから…」

「(…気のせいかしら…ショートソードの魔力が上がっているような気が…)」

「ん?どうしたアルモ!?」

「ううん、なんでもないわ…アコード、この前も聞いたけど…あなたの先祖とか親戚とかに、魔法を使っている人って…」

「…確か、家系図を見せてもらった時には居なかったような気が…ただ、フォーレスタ村の外から嫁いできた人や、婿に入った人も居たみたいだから、その中に魔法を使う人が絶対に居なかったとは言えないと思う」

「仮に魔法を使える人が村長の家系に入ったとなれば、村中大騒ぎになるはずだから、その人が魔法を使えることは、間違いなく隠されているはずだし…」

「そうよね…いや、あなたに譲ったショートソードの魔力が、以前私が持っていた時よりも上がっているようだから…」

「それって、つまり…」

「恐らくだけど…アコード。一緒にコボルトを退治した時にも言ったけど、あなたに魔法の素質が、それも、私とは比べ物にならないほどの潜在的な素質がある、ということよ」

「…魔法を使えない、俺が、か?」

「ええ」

 俺に魔法の素質があると断言するアルモ。

「…だが、何回も言わせてもらうが、俺は魔法を使うことはできない…」

「私だって、初めから魔法が使えた訳ではないわ!」

「…アルモは確か…」

「この剣が、魔法の使い方を導いてくれたの!」

「…ていうことは、俺も導きがあれば…」

「私以上に、魔法が使えるかも知れない…」

「…」

 通常、魔力を帯びた剣を使うには、相当の鍛錬を行うか、初めからその素質を持っているかのどちらかをクリアする必要があるという。

 俺は、フォーレスタの村が狂気に侵されたコボルトの集団に襲われた際にアルモと出会い、彼女からショートソードを譲り受け戦った。

 彼女の持つ古の剣『月明りの剣』から影響を受けたこのショートソードには微量の魔力が宿っていて、魔法剣を扱う鍛錬を積んだ歴戦の勇者か、初めから素質を持つ者しか扱えないはずだった。

 アルモは俺を試すという意味で、このショートソードをフォーレスタの有事の際に俺に渡したみたいだったが、俺はこの譲り受けたショートソードを難なく扱い、アルモと共にコボルトと戦った。

 無論、俺は魔法剣の存在すら知らなかった訳だから、当然その扱い方の鍛錬なぞ受けられる機会すら与えられていない。

 つまり、このショートソードが扱えた段階で、俺には魔法の素質があるということになる。

 そして、このショートソードの魔力が増えたということは、俺の中に眠る潜在的な魔力にショートソードが反応した、ということになるというのだ。

「…実は、フォーレスタ家の人間が村長になる際、現村長から次期村長に秘密の儀式が行われることになっている。もしかしたら、現村長である俺の母さんなら、何か知っているかも知れない…」

「…アコード、戻って確かめてみる?」

「!!」

「私は情報を整理するために、予定通りサプコッタの父さんと母さんの元に戻るけど…アコードの魔力の源が何なのか、この際ハッキリさせておいた方がいいと思うの」

「アコード、これを受け取ってくれない?」

 道具袋の中から、金属で作られたCAのエンブレムを取り出すアルモ。

「このエンブレムは、アコードが持っているショートソードの柄のすぐ上にあるくぼみにはまるよう作られているわ。受け取ってもらえる?」

「これを受け取るということは、つまりはワイギヤ教団を敵に回すのと同じ意味になるけど…」

 アルモの忠告の言葉が終わる前に、手の平の上で輝くエンブレムを奪い、俺はショートソードにはめ込んだ。

「…アルモと一緒に旅をしようと決めた時、俺は決めたんだ。叶うなら、アルモと同じ道を歩んでいきたいってね」

「アコード…」

「フォーレスタの村からは少し離れてしまったけど、ここからなら引き返してもそんなに日数はかからないだろう。アルモ!俺は一度フォーレスタに帰って、母さんから話を聞いてみることにする。アルモからもらった、このエンブレムと共に…」

「分かったわ。さっき渡したその布は、何かの時に使えると思うから、あなたが持っていて!」

「了解!」

「1か月後、サプコッタ大陸のナヤラーンの町で落ち合いましょう」

「分かった」

「気を付けてね!」

「アルモこそ、気を付けて!」

 俺とアルモは、それぞれの生家に向かい歩き出した…。

Episode6 に続く