原案:剣世 炸/加賀 那月
著:剣世 炸
Episode6「ワイギヤの血筋」 第2話 〜フォーレスタ家の秘密〜
「?…!!アコードじゃないか!アルモとの旅はもう終わりにしたのかい!?」
村長である母が、扉から姿を見せた俺を見て驚く。
「おやっ。シューとサリットも一緒なんだね」
「村長、失礼します」
「おばさん、お邪魔します」
俺の影にいたシューとサリットが、俺の前に出て母に挨拶する。
「さぁ、お茶を入れるから、3人とも椅子に座ってちょうだい」
俺は入口に魔法を遮断する布で包んだショートソードをたてかけると、2人の幼馴染と共にリビングにある椅子に腰かけた。
程なく、4人分のお茶とお菓子がテーブルに並べられ、母も椅子に腰かけた。
「それにしても…随分と早く帰ってきたものだね…って、アルモはどうしたんだい?」
「母さん…その質問に答える前に、確認しておきたいことがあるんだ…」
「…何だい?」
「フォーレスタ家…つまり、俺の家系に、アルモが村を救ってくれた時に使った『魔法』を使えた人って、居たのかな…」
「!!急に何を言い出すのかと思ったらこの子は…魔法を使えるのは、教団の偉い神父様のみじゃないかい…」
「母さん!誤魔化さないでくれ!!俺は、アルモと旅をして、世界を理の片鱗を見て来たんだ…全世界のほとんどの人が信仰しているワイギヤ教団の真実を…」
“ヒュウゥゥゥゥゥゥ”
その時、窓から突風が入り込み、俺が玄関に立てかけたショートソードを包んでいた布をはぎ取った。
気のせいか、ショートソードはアルモの月明りの剣と同じように、ぼんやりと鈍い光を放っているようにも見える。
「その剣は、お前がアルモから譲り受けたという剣。そして、柄にある紋章は…」
「そうだよ母さん。アルモはCA、三日月同盟の一員だった。そして俺も今は…」
「おばさん!アコードとここに来る途中で、森にある祭壇の洞窟の入口にもその紋章が刻まれているのを思い出しました。森にある祭壇の洞窟は、古からフォーレスタ家が守り続けていると聞きます。どう考えても、この2つの一致が無関係だとは思えません!」
「村長!アコードが戻ってきたら、俺とサリット2人で、アコードの助けになりたいと思っていました。それに、教団の神父でないアルモが魔法を使い、この村を救ってくれたあの時から、俺とサリットはおかしいとも思っていたんです。何故教団の神父しか、魔法が使えないのかって…だから、差支えなければ、俺たち2人にもお話下さい」
「シュー!それにサリットも…」
母の顔を見ると、それは村長のものへと変わっていた。 鋭い眼差しで俺たち3人を見つめている。
「アコード…お前は、本当に良い幼馴染を持ったもんだ…」
そう言うと母は、その場で立ち上がると、小声で何かを唱え出した。
アルモやレイスが魔法を使用するところを目の当たりにしてきた俺は、母が何をやろうとしているのか、即座に察する。
「母さん、それは…まさか魔法!?」
「えっ?」
「何だって!!」
刹那、母が白く強い光に包まれると、小さい頃母から聞かされたおとぎ話に出てくるような、ローブ姿の魔導士へと姿を変えていた。
魔導士姿の母が確認できる程に光が弱まってからも、母を淡い光が取り巻いている。
「母さん!!その姿は…」
「説明は後だ。アコード!お前が世界の理を知ってしまった以上、仕方がない。成人には少し早いが、今から儀式を行う」
「儀式って…まさか…」
「ああそうだ。私は現在の村長として、お前を試さねばならない。そして、試練に打ち勝ったその時、我がフォーレスタ家が守ってきたもののことを話すとしよう」
「私は祭壇の洞窟で待っている。シューとサリット、お前たちももうこの件と無関係ではなくなってしまった…我が息子を補佐し、一緒に祭壇の洞窟の奥まで来て欲しい」
“ヒュン”
次の瞬間、突風が吹いたかと思うと、魔導士姿の母はその場から姿を消していた。
「母さん…」
「アコード。村長が使ったあれって…」
「ああ。アルモとの旅で何回も見てからから分かる。あれは、間違いなく魔法だ」
「村長は、あなたと一緒に私たち二人も祭壇の洞窟に来るようにって、言い残していったわね…」
「シュー。それにサリット…お前たちを、俺のかけがえのない親友を、この件に巻き込みたくはなかったんだが…」
「何を言っているの?アコード!!自警団を結成する時のあなたも『命懸けの任務になることもあるから、2人を巻き込みたくなかった』とか言っていたけど、アコードが命懸けの任に着くのを助けたいって言って自警団に参加したのは、私たち2人の意思だったのよ!」
「その通りだアコード!俺たちは、お前が困っている時には助けるし、お前が笑っている時は一緒に笑っていたい。それに、村長は俺たち2人にアコードの補佐を命じた。この村で村長の命令は絶対だろ!?」
「2人とも…ありがとう」
「それじゃ、祭壇の洞窟に出発だ!!」
「おう!!」
「ええ!!」
俺は2人の先陣を切ると、扉を開け、月明りが照らす森へと飛び出した。
第3話 に続く