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剣世炸 novel site 〜月明りの少女〜

月明りの少女

原案:剣世 炸/加賀 那月
著:剣世 炸


Episode6「ワイギヤの血筋」 第3話 〜試練の始まり〜

 瞬間移動の魔法で祭壇の洞窟へ移動とした村長である母を追うため、俺と2人の幼馴染は月明りに照らされたフォーレスタの森を駆けていた。

「…こんな風に走るのは、お前が旅立って以来か…何だか懐かしい感じだ」

「シューったら大袈裟な…アコードがアルモと旅立って、まだひと月位じゃないの!」

「そうか…俺がこの村から旅立ってから、まだそれしか経ってないのか…」

「…それがどうかしたか?」

「いや、アルモと旅立ってから随分といろいろなことがあってさ…もう1年位この村から離れていた感覚なんだよ…」

 アルモと共にフォーレスタ村を旅立ってからひと月余り。本当にいろいろなことがあった。

 途中立ち寄った村の寺院での、レイスとの戦い。

 ガイーラ・レイスとの合流と、王都へ向かう途中に遭遇したワイギヤ教軍の将軍との戦い。

 王城への侵入と、ガイーラに扮していた敵将との戦い。

 そして、世界の理と俺の一族の秘密…

 全てはアルモがこの森を訪れ、狂気に満ちたコボルトを今ここにいる俺たち3人と共に退けたことが起点となっている。

 俺は、目に見えない大きな力によって、俺とアルモ、そして2人の幼馴染の運命が動かされているように感じずにはいられなかった。

「まぁ、かく言う俺も、アコードが旅立ってから自警団の団長に就任したり、王都から避難してきた人々の対応をしたりで、アコードと同じような感覚ではあるんだけどな!」

「確かに、アコードやシューと一緒にいた頃の自警団とは比べ物にならない程、このひと月は忙しかったわね…」

「2人とも、俺のわがままで忙しい思いをさせてしまって、すまない…それに、今回のことも…」

「もぅ!アコードったら…」

「そういったこと全部含めて、俺とサリットはお前についていくって言ったじゃないか!!」

「ありがとう…シュー。サリット」

 気付くと俺たち3人は、CA…三日月同盟の紋章が刻まれた洞窟の前に到着していた。

「…ついたわね」

「そう言えば…この洞窟、どうやって入ればいいんだ?」

 シューが疑問に思うのは、もっともなことだった。

 何故なら洞窟の入口は、石扉で固く閉ざされているからだ。

「アコード。この扉の開け方、知ってるの?」

「…昔、母さんから聞いたことがある…」

「(試練受けし者。己の力を信じ、扉の前で祈るべし。魔力応えし時、扉は開かれる)」

「魔力応えし時?」

「扉に魔力があって、アコードの祈りが届けば扉は開くってこと?」

「なにぶん、小さな時に母から聞かされたことだったからな…サリットが言ったように俺は理解していたけど…」

 月明りに照らされ、洞窟を固く閉ざす石扉が淡く光っている。

「!!アコード!!!その体、どうしたんだ?」

「どうした…って………!!!?」

 シューに言われて確認した俺の目に映ったのは、淡い光を放つ俺の右腕だった。

「アコードの魔力に、扉が反応して、いる!?」

「…そう踏んで間違いないだろうな…」

「…ていうことは…」

「後は、俺が祈るだけ、か…」

 刹那、俺は右膝を地面につき、両手を合わせ目の前で組むと、目を瞑り天に向かい祈りを捧げた。

“ヒュウゥゥゥゥゥゥ…ピカッ”

「アコード!」

 今まで体感したことのない力の流れを感じた俺が目を開くと、身体全体を覆っていた淡い光は、周囲を昼間と勘違いさせる程の眩い光へと変貌していた。

「アコード!大丈夫?」

「ああ…むしろ気分が良い位さ…」

“フォーレスタの血を受け継ぎし者よ…私の子孫よ…今こそ扉を開くのだ!!”

「!!」

「今度はどうした?アコード…」

「声が…今、声が聞こえなかったか?」

「シュー、聞こえた?」

「いいや、何も…」

「(2人には聞こえていないのか…)」

「今、声が聞こえたんだ。『扉を開けよ』って…」

「それって、アコードにしか聞こえていないんじゃないのかしら?」

「フォーレスタの村長を引き継ぐ資格のある者にしか聞こえない声、とかじゃないのか?」

「恐らくは、そんなところかも知れない…」

「アコード!シュー!見て!!」

 サリットの指さす方向を見ると、先ほどまで淡い光だった石扉の輝きが、直視できない程眩くなっていた。

 そして石扉の輝きは、俺の身体と一筋の光で繋がっていて、俺から光を吸収しているような動きを見せている。

「…アコードの光を、あの石扉が吸収しているように見えるが…」

「ああ。だが、それで良いみたいだ」

 俺は、光を吸収し続ける石扉を指さす。

“ギギギギギギギギキ…”

「…あっ…扉が」

 俺から光を吸収し続ける石扉は鈍い音と共に、少しずつ奥へと開いていく。

“ギギギギギギギギギ…ズドン”

「…開いたわね」

「見ろっ!扉の光が…」

 石扉は奥へと開き切ると同時に、急速にその光を失い、ただの石扉へと戻っていた。

 同時に、俺の身体を取り巻いていた眩い光も少しずつ収まっていき、数秒後にはいつもの状態へと戻っていた。

「よし!扉は開かれた!!シュー、サリット。行こう!!」

“ギギギギギギギギ…”

「アコード…どうやら、そうは問屋が卸してくれないみたいよ…」

 サリットの言葉に、鈍い音のする後方へと目をやる。

「…石像が…動いている…」

「来るぞ!!」

 兵士を象った石像の一撃を寸でのところで避けた俺たちは、石像を囲むように三方向へと散り、瞬時に臨戦態勢を整えた…


 第4話 に続く