原案:剣世 炸/加賀 那月
著:剣世 炸
Episode6「ワイギヤの血筋」 第4話 〜ガーディアンとの闘い〜
“スーーーー…キン”
俺は鞘からショートソードを抜き去ると、目の前に構えた。
俺の周囲を、ショートソードが放つ仄かな光が包み込む。
「アコード!そのショートソード…始めっから光ってたっけか?」
「説明は後だ…来るぞ!!」
祭壇の洞窟の石扉を開いたと同時に動き出した、恐らくはこの洞窟を守るガーディアンなのだろう石像は、俺たち3人に取り囲まれながらも臆することなく、俺めがけて攻撃を仕掛けてきた。
“ブゥン”
「アコード!危ない!!」
鋭利に研ぎ澄まされた斧を軽々と振りかざしながら、石像は少しずつ俺に近づいてくる。
“サッ”
その攻撃を避けつつ、2人の幼馴染にアイコンタクトを取りながら、石像に近づいていく。
“ブゥン”
“サッ”
「今だ!!」
「ヤーーーー」
「エイッ」
石像からの2回目の攻撃を避けたその瞬間、俺は共に石像との間合いを狭めていた2人に合図を送り、一斉攻撃を仕掛けた。
俺とシューが跳躍して切りかかると同時に、サリットは短曲剣(マインゴーシュ)を石像めがけて放った。
“ズサズサッ”
サリットの短曲剣は軌道を左右に湾曲させながらも的確に石像を捉え、得物を持たない反対の指の数本を切り落とした。
“ズサッ”
“ズシュッ”
そして跳躍して切りかかった俺とシューの一撃は、それぞれ得物を持つ右手と左足にヒットし、石像はその衝撃で数歩後ろへと下がった。
「また腕を上げたなシュー!それにサリットも!!」
「アコードも、その光る剣に負けない攻撃だったわよ!」
“ゴゴゴゴゴゴゴ…”
「奴さん、まだまだ戦う意思があるみたいだぞ…」
シューの一言で俺とサリットが石像を再び見ると、石像は今までとは比べ物にならない程のスピードでこちらに突進し、攻撃を仕掛けてきた。
“キィン…”
その攻撃を、俺とシューが何とか防ぐものの、石像の驚異的なパワーに圧倒され、身体毎少しずつ後ろへ押されていく。
「アコード、このままじゃ…」
「分かってる!!サリット!俺とシューでこの石像を抑え込むから、お前の短曲剣で再び攻撃してくれ!さっき指を落としたみたいに、今度は斧を持つ右手の指を狙うんだ!!」
「了解!ちょっとだけ待ってて!」
言うが早いか、サリットは石像の後ろ側に落ちている短曲剣を取りにダッシュする。
そして、サリットが短曲剣を拾い上げようとしたその瞬間、俺の持つショートソードの仄かな輝きが眩い光へと変わり、俺たち3人と石像を包み込んだ。
そして…
「『…フォーレスタの民よ…我が子孫よ…今こそ、力を解き放つ時』」
「シュー!何か言ったか?!」
「いや何も!それより…光が…アコード!お前の身体に吸い込まれていくぞ!!」
「えっ!?」
俺たちを包み込んでいた眩い光が、シューの言ったように、俺の全身へと吸収されていく。
「『さぁ我が子孫よ…今こそ力を解き放つのだ!!』」
「(…ウィル・オ・ウィスプよ!我、汝に命ずる!戒めの光を解き放ち、敵を拘束せよ!!)」
「(言葉が頭の中に自然と浮かんでくる…この言葉は…確かアルモが魔法を放つ前にやっていた詠唱!!)」
アルモとの戦闘を思い出し、俺の脳裏に自然と浮かんでくる言葉が魔法を放つ前の詠唱であることに気付いた俺は、脳裏をリピートしている言葉をオウム返しで詠唱する。
「ウィル・オ・ウィスプよ!我、汝に命ずる!戒めの光を解き放ち、敵を拘束せよ!!」
「アコード!!」
「それって…」
詠唱が終わると、俺は剣を頭上にかざした。
“アージェンテ!!”
“ピカッ…シューーーー”
ショートソードの先端から無数の眩い光が解き放たれ、石像を包み込むとまるで光るロープのように石像に絡みつき、自由を奪うことに成功した。石像は何が起こったのか分からないといった表情を見せながら、まるで誰かに羽交い絞めにされているかの如く微動だにできずにいる。
「よしっ!今だ!!」
“シューン”
刹那、サリットが拾い上げた短曲剣を、俺の指示通り石像の右手指目がけて投げかけた。
“ズサズサズサ…”
“ズドーン!!”
サリットの短曲剣は見事に命中し石像の右手指数本を切り落とすと同時に、ようやく重量感満載の斧を地面へと落とさせることに成功した。
「シュー!」
「ああ!分かってる」
声を掛けたシューと共に、石像の懐へと飛び込んだ俺は、幼馴染と共に石像に剣を深々と突き立てると、後方に飛び退いた。
“ピカッ!キラキラキラ…”
次の瞬間、石像の体は白い光と化し、一瞬にして周囲に離散した。
「…終わった…のかしら、ね…」
「(我が子孫よ…試練は乗り越えられた!さぁ、洞窟の奥へと進むが良い…)」
「そうだな…よしっ!シュー、サリット!先に進んでみよう!俺に語り掛ける声が、先に進めと言っているし、な!!」
「アコード…やっぱり私たち2人以外の声が聞こえているのね…」
「ああ」
「兎に角、先に進むのが先決でしょ!」
「シューの言う通りだ!先に進もう!!」
こうして、何とか第一の試練を乗り越えた俺たち3人は、洞窟の奥地へと足を踏み入れたのだった。
第5話 に続く