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剣世炸 novel site 〜月明りの少女〜

月明りの少女

原案:剣世 炸/加賀 那月
著:剣世 炸


Episode6「ワイギヤの血筋」 第6話 〜燃え尽きた生家〜

 ナヤラーンの宿屋を後にした私は、無理を言って馬屋から馬を一頭借りると、生家のある森へと急いだ。

“パカラッパカラッパカラッ…”

「(父さん、母さん…どうか無事で…)」

 街を出発してから約1時間後、森の奥の方が赤くなっているのを確認する。

「(あの赤い光は…間違いない…森が燃えているんだ…)」

「(父さん、母さん…)」

“パシッ”

「お願い!急いで!!」

「ヒヒヒヒーーーーン」

“パカラッパカラッ”

 私の願いを聞き届けてくれたのか、馬の速度が少しだけ早くなった気がした。

「(父さん、母さん………)」

 生家に近づく程に、赤い光の強さが増すと共に、徐々に木々が燃える匂いと煙が濃くなっていく。

 そして生家を見渡すことのできる高台に到着した私は、馬を降り唖然とした。

「私の家が…父さんと母さんが幸せに暮らす家が…燃えている…」

 内部からの失火か、それとも何者かの仕業なのか…

 ごうごうという音を立てながら、生家の周辺は火の海と化していた。

「(ここは湖が近い…今の私なら、ウンディーネの力を借りて、火を消せるかも知れない…)」

“スタッ”

“ピシッ”

「ヒヒーン!」

“パカラッパカラッパカラッ…”

 私は再び馬に乗ると、生家の近くまで馬を走らせることにした。

 父さんと母さんが生きているとすれば、あの火の海の中にいるとは考えにくい。

 となれば、あれを鎮火すれば、父さんと母さんが無事か否かを確認することができるはずだ。

 ウンディーネの魔法は、ここ最近月明りの剣から導きを得て覚えたばかりだが、この火の海をどうにかするためにも、やるしかない。

「(…練習ではうまくやれたけど…ウンディーネ…どうか私に力を貸して…)」

 高台から馬を走らせ数分後、私は湖の畔にいた。

 振り返ると、数百メートル先に燃え盛る生家を確認することができる。

「(…ここなら、ウンディーネの力を十二分に発揮できるわね…)」

 馬を近くの樹木に繋ぐと、私は天を仰ぎ、祈りを捧げる。

「水の精霊ウンディーネよ…その力で森に蔓延る炎を消し去りたまえ…」

「レイン・シュトゥールム!!!」

“バシャッ”

 全身が水色の、美しい半魚人姿のウンディーネが姿を現し、ウィンクをする。

“………ザーーーーーー”

 刹那、雨雲が周囲を包み込むと大粒の雨が降り出した。

“シューーー”

 同時に白い煙が立ち上り、森に蔓延る炎を一網打尽にしていく。

 数分後、生家の周囲を取り巻いていた炎は完全に鎮火された。

 それを確認したウンディーネが再びウィンクをすると、周囲に立ち込めていた雨雲は一瞬に消え去り、同時に月明りによって森が照らされる。

「(ウンディーネ…ありがとう!)」

 私の想いを悟ってか悟らずかは分からなかったが、ウンディーネは次の瞬間には姿を消していた。

「(これで炎は消えたわ…父さん…母さん…無事でいて…)」

 繋いだ馬のひもを解くと、私はその背に乗り、生家のあった場所へと向かう。

 数分後…

「!!……………」

 私は言葉を失った。

 数年前まで、育ての両親と共に暮らした生家は、あの炎によって完全に焼失していたのだ。

“バリッ…ミリッ…”

「………」

 私は跡形もなくなってしまった生家に足を踏み入れ、両親の無事を証明するものを探す。

「(もし、この家と共に父さんや母さんが焼かれてしまっていたとしたら…)」

 人の骨というのは、民家が焼けた炎位では燃え尽きないものだと、父のCAの知り合いの葬儀に参列した際、教わったことがあった。

 つまり、燃え尽きた生家の中に人骨が存在しなければ、両親はどこかに避難し無事ということになる。

 数分後、私は燃え尽きたこの生家に人骨は一つもないことを確認することができた。

「(…フゥ…とりあえず、父さんと母さんは無事みたいね…)」

「(父さんと母さんが避難する場所と言えば…あそこしかないか…)」

 私は、再び馬の背に乗ると走り出した。

 そして数分後…

「(明かりが…見える!!)」

“ピシッ”

「ヒヒーン!」

 お目当ての場所=薪などの倉庫として使用している小屋 に明かりが灯されていることを確認した私は、馬にむち打ち、その場へと急ぐ。

“パカラッパカラッパカラッ”

「(父さん!母さん!!どうかそこに居て…)」

“ザザッ”

 小屋の前に到着した私は馬から飛び降りると、小屋の扉の前に立ち、声を掛けようとする。

“バタンッ”

“キンッ”

 突然の殺気に自然と動いた体は、月明りの剣を鞘から抜き去り、小屋から出てきた人物の一撃を寸でのところで防いだ。

「誰だ!!」

「……父さん…やっぱり父さんだ…よくぞ無事で…」

「…アルモ…アルモなのか!!」

“ドサッ”

「アルモ…なのね!!」

 互いの存在を確認した私と父はその場で得物を落とし、小屋から出てきた母と共に泣き顔になりながら、互いを抱きしめたのだった。


 第7話 に続く