原案:剣世 炸/加賀 那月
著:剣世 炸
Episode6「ワイギヤの血筋」 第9話 〜フォーレスタの試練〜
アルモが両親と再会し、アコードとの運命的な出会いに心打たれていたその頃、アコード達3人は、洞窟を守るガーディアンの試練を乗り越え、洞窟の奥地へと歩を進めていた。
“ポチャ…ポチャ…”
「キャッ!?」
「サリット!どうした!?」
「敵か!?」
「シュー、それにアコード、ごめんなさい…水滴が背中に当たって、ビックリしただけ…」
「そうか…」
洞窟の前でガーディアンと戦ったばかりの俺たちは、さまざまな感覚が敏感になっているのだろう。普段なら何てことないような事象にも、過敏に反応するようになっていた。
「まぁ兎に角、慎重に進もう。何か異変があれば、どんなに些細なことでも、情報を共有しながら行こう」
「そうだな」
「ええ」
洞窟は、明らかに人の手によって作られたものだった。周囲が石のブロックによって覆われ、ところどころに当時の文明による装飾が施されている。
魔法の力により光っているのだろうか?装飾と共に等間隔に配置されたランタンが、青白く輝き薄暗い洞窟を照らしている。
「…フォーレスト城の隠し通路と、同じ位の明るさだな…」
「そう言えば、アコードはフォーレスト城にも忍び込んだんだっけ…」
俺は、ヒカリゴケの光に似たランタンの青白い光を見て、アルモ、ガイーラ、レイスと共に忍び込んだフォーレスタ城の隠し通路のことを思い出した。
「そう…でも、一緒に忍び込んだうちの1人は、その時既に敵と入れ替わっていて、謁見の間で正体を現したワイギヤ教軍十二将の1人と戦ったんだ…」
「…本当にワイギヤ教団は、俺たちを大昔から騙し続けているってことなのか…」
「…多くの国が『国教』として崇め奉る宗教だから、普通に暮らしている分には、可笑しいだなんて考えないわよね…」
「ああ。だからこそ、教団はそれを利用しているのだと思う」
「魔力の源の占有か…でも、ワイギヤ教の教祖は、魔力の占有が発生しないように、教団を作ったんだろう?」
「CAにはそのように伝承されているし、アルモが見た剣の記憶の中でも、教祖ワイギヤと剣士クレスはそう言っていたようだ」
「それが真実なら、本来この世界は魔力溢れる世界で、誰もが自由に魔法の力を行使できる世界になっていたとしても可笑しくない、ってことよね?」
「でもさ、教団の将軍が魔法を使えるのは分かるとして、アルモやモンスター、妖精達が魔法の力を行使できるのは、どうしてだ?魔力の源って、教団によって占有されているんだよな?」
「その辺りの話は、アルモから詳しくは聞いていないんだ…もしかしたら、アルモも知らないことなのかも知れない…」
「…いずれにしても、この先で待っているであろうおばさん…村長に会って真実を確かめないとね!」
「そうだな!」
話をしながら奥へと歩を進めると、大きな地底湖へと到着した。中央には祭壇のようなものがあり、橋が架けられている。
「アコード!あれ!!」
サリットが指さした祭壇をよく見ると、祭壇の前に魔導士姿の人間が立っているのが分かる。
「あれって、もしかして…」
「ああ、母さんに違いないだろう。急ごう!」
「そうだな!」
「ええ」
魔導士が母さんだと確信した俺は、シュー、サリットと共に地底湖に浮かぶように存在する祭壇へと急いだ。
ところが、祭壇へと繋がっている石の橋に差し掛かった時、それは起こった。
“グゴゴゴゴゴゴ…”
「シュー!サリット!!」
2人の名を呼び、静止を促す。
「なっ…何だ?」
「あれを見て!」
再びサリットが指さす先には、実態がないのではと思わせるような、巨大な光により形作られた兵士が立っていた。
“アコード!それにシュー、サリットよ!”
「母さん!!」
祭壇の前にいる魔導士姿の母さんが、この地底湖に響き渡る程の声量で、俺たちに話しかける。
“その光の巨人兵を倒し、私の元に来るのだ!”
「こいつ、何だか洞窟に入る前に戦った奴に似てないか…」
「そうだな…だが、強さはその比じゃない気がする…」
「アコード、分かるの?」
「何となく、だけどな…」
“これが、フォーレスタ家の家長になるための、最後の試練だ…本気を出さないと、3人共死ぬことになるぞ!”
「らしいぜ、アコード!」
「頼りにしてもらっていいんだからね、アコード!」
「シュー、サリット…ああ、頼りにしてるぞ!」
“ザザッ”
俺は地面を蹴ると、光の巨人兵に向かい突撃した。
第10話 に続く