原案:剣世 炸/加賀 那月
著:剣世 炸
Episode8「聖遺物を求めて」 第4話 〜助っ人〜
“ブゥン!”
「みんな!避けろ!!」
“ザザッ”
問答無用で攻撃を仕掛けてきたのは、パジラだった。
アルモら3人は、俺の言葉に即座に反応し、パジラのグレートソードの切っ先が触れる直前にその場を離れ、攻撃は空を切った。
“ザシュ”
そこに間髪入れず、ラジマが青龍刀の攻撃を仕掛ける。
「アコード!危ない!!!」
アルモの悲鳴にも似た忠告が、森に木霊する。
その時だった。
“ギィン!”
俺にラジマの青龍刀がヒットする直前に、その攻撃は何者かによって防がれた。
「…ちょっとは腕を上げたかと思ったが、危なっかしくって見てられないな!」
背丈はアルモより少し低く、髪の毛はベリーショートのブロンドで、一見すると男性のようにも見える。
「君は……もしや!」
「レイス!レイスなの!?」
“ドスッ”
「グワッ!」
その女性が、がら空きになっていたラジマの局部に足蹴りをお見舞いすると、ラジマは悲痛な声を上げながら数十歩先の大木まで飛ばされた。
“ドン!………ザワザワザワザワ…”
その巨体が大木にぶつかると同時に、ラジマの頭上から大量の葉が降り注ぐ。
「随分と久しい気がするな。アルモにアコード!」
その女性は、紛れもなくレイスその人だった。
「髪型が随分と変わっていたから、すぐに気づけなかったよ…」
「アコード、その人は?」
「レイスと言って、アルモとの旅の途中で知り合ったんだけど…」
「自己紹介はあとだ。今は目の前の敵に集中しよう!」
レイスの言葉に全員が2人の将軍の方を見ると、パジラは空を切った攻撃の反動で前のめりになった態勢を整え、ラジマもレイスの一撃から復帰しようとしていた。
「アコード。私は…」
「何もいうな、レイス。そこにいるシューとサリットと一緒に、ガイーラの仇を取ってくれ!俺とアルモはパジラの相手をする!」
「そういうことなら、任せてくれ」
「あなた程、私たちは強くないけど、全力でサポートするわ!」
「シュー、にサリット。よろしく頼む!」
“ザザッ”
そういうとレイスは、ラジマ目がけて突撃した。
「さて、俺たちも行こう!」
「ええ!」
“ザザッ”
次の瞬間、俺とアルモは同時に地面を蹴り、パジラに向かって突撃した。
***
“スタスタスタスタ…”
「(…スピードは…申し分なさそうだな)」
振り返ると、恐らくアコードの同郷の者であろうシューという男性と、サリットという女性が私の後をついてきている。
“ザザッ”
そして、私はラジマまで数歩に迫った場所で突撃を止め、後ろから来る2人にも突撃を止めるよう、左腕を真横に伸ばして静止を促す。
“ザザッ”
合図の意味を察したのか、2人は突撃を止め、私が伸ばした左腕の数歩後ろで武器を構えた。
「…シュー達は、普段どんな戦い方をしているんだ?」
「俺は、主にこのカットラスを使った接近攻撃だな」
「私は、短曲剣(マインゴーシュ)を使った投剣術でサポートすることが多い感じ」
「…ありがとう。………シューは私と一緒にラジマに切りかかる。隙をみてサリットが投剣術を使ってマインゴーシュを奴に投げる。それにひるんだ敵の隙を突く形で、再度私とシューが奴に攻撃を仕掛ける。この繰り返しでどうだろうか?」
後ろの2人が、黙って頷く。
「よし!それじゃ今度は、こちらが問答無用で攻撃する番だ!!」
「なっ!!!」
“ザザザッ”
私たち3人は、ラジマの言葉を遮るように、一斉に地面を蹴った!!
***
「それにしても、こんなところでレイスと会えるなんて思わなかったな…」
「…実は、グルンニードの宿を出た直後から、何となくだけど尾行されていることには気づいていたわ」
「えっ!?」
「いや『何となく』だったし、もし私たちを暗殺するつもりだったら、ここに来るまでの間にいくらでもチャンスはあったはず。なのに襲撃もされなかったし、尾行していながら、その気配から悪意を全く感じなかった。だから、正体を現すまで放っておいても問題ないと判断したのよ」
「そうだったのか…」
「ペチャペチャと、敵の前でよく喋れたもんだな!」
声のした方向を見ると、パジラがグレートソードを片手で持ちながら肩に掛け、ニヤニヤしながらこちらを見ている。
「おしゃべりなことが、そんなに悪いことかしら!?」
“カチャ”
先ほどとは一転した険しい表情で月明りの剣を構え、アルモがパジラに牽制を浴びせる。
「『弱い犬程、よく吠える』という言葉を、どうやら知らないようだな!」
「…『オウム返し』ね…」
「何だって!!!」
“ドン”
肩にかけていたグレートソードの切っ先を地面に叩きつける。アルモの度重なる挑発に、憤怒したようだ。
「アルモ…あんなに怒らせて、大丈夫なのか?」
「…初めて君と共闘した時のこと、覚えてる!?」
「…コボルトとの戦いのことか?」
「ええ。あの時、君がコボルトを怒らせた理由…そこに答えがあるわ」
“ドン!!……ドン!!!”
頭に血が上ったパジラが、一歩進むごとにグレートソードを地面に叩きつけ、軽い地響きが起こる。
「…冷静さを欠かせて、正常な判断ができないようにする…ってことか?」
「そういうこと!さて、仕上げといきますか」
アルモがその容姿に似合わない、不敵な笑みを浮かべる。
「アコード!!さっさとあの『臆病者』を退治して、レイス達と合流するわよ!」
「誰が臆病者だぁぁぁぁぁ!!!!!」
“ドスン!!!”
地響きがより大きくなる。
「フォーレストで私たちと戦った時、剣が刃毀れを起こしただけで教団に逃げ帰ったのは、どこの誰だったかしらね!?」
「ほざけぇぇぇぇ!!!!」
“ドンドンドンドン…”
堪忍袋の緒が切れたのだろう。パジラがその巨体を揺らしながら、こちらに突進してくる。
「来るぞ!アルモ!!!」
「ええ。あの時の決着、今こそつけさせてもらうわ!!」
“ザザッ”
憤怒して冷静さを失ったパジラに向かって、俺とアルモは同時に地面を蹴った!!
第5話 へ続く