原案:剣世 炸/加賀 那月
著:剣世 炸
Episode8「聖遺物を求めて」 第5話 〜ラジマとの闘い〜
“ギィン!”
“ガン!”
「…三人一斉にかかって来ないのか?我に小細工は通用せぬぞ!!」
私の攻撃を青龍刀で、シューの攻撃を左腕に装備したガーターで防いだラジマが言い放つ。
「…挑発にのるなよ、シュー!」
「ああ!分かっているさ!!」
“ザザッ”
その言葉を合図に、私とシューが後方に退く。
「おっとと!!その手にかかる我ではないわ!」
「…甘いわね!!」
“ヒュン…ヒュン…”
“…ザシュ!…ザシュ!”
体制を維持することで余裕を失っていたラジマに、サリットが放った短曲剣(マインゴーシュ)がクリーンヒットし、右腕と左足から鮮血がほとばしる。
“ザザッ…シュン!!”
だが、そんなことはおくびにも出さず、後方に退いた私とシューに近づき、ラジマは青龍刀を振りかざした。
“ザザッ”
私とシューは、それぞれ対角線上に飛び退き、ラジマの一撃から難を逃れる。
“ヒュン…ヒュン…”
“…カン!…ザシュ!”
そんなラジマを見たサリットが再び攻撃を仕掛けたものの、今度は最初の一撃を左腕のガーターで弾かれてしまった。
だが、二発目は右足にヒットし、先ほどと同じように切り口から鮮血がほとばしっている。
“ザザッ”
その間に私はシューと再度合流し、ラジマの様子をうかがいながらシューに問う。
「シュー。サリットのあの攻撃は、あと何回可能なんだ!?」
「サリットは、マインゴーシュを10本は常備している。つまり、今の攻撃の仕方を続けるなら…」
「あの攻撃は、あと3回までしか使えない、という訳だな…」
「ああ。サリットのネタが尽きる前に、俺とあんたでケリをつけなきゃいけないってことさ!」
「了解した。ならば、シュー。奴のことを少し話しておかねばなるまい」
“ザザッ!”
“スタスタスタスタ…”
ラジマを中心にコンパスで円を描くように一定距離を保ちながら、私とシューが走り抜ける。
「…」
「…」
私は走りながら、シューにフォーレスト城での奴との戦いのことを話した。
「…つまり、その『シャドウザバンド』を使われちまうと、俺たちの攻撃が無効化されてしまう、って訳だな…」
「そうだ。だが、この魔法には重大な欠点がある。それは、無効化できるのは一回きりで、一度その効果が発動してしまうと、それからしばらくの間は新しく魔法をかけることができないのさ」
「…なぜだ!?」
「攻撃を無効化する際、身体を分子レベルの光の粒にする必要がある。その際、体内に残された大半の魔力を、魔法に持っていかれてしまうからさ」
「なるほど…ていうことは、その魔法をわざと使わせた後、実体化したラジマに攻撃を仕掛ければ…」
「ああ。間違いなくその攻撃を避けることはできないだろう」
「…であれば、このことをサリットにどうにかして伝えないと…」
『それには及ばないわ、シュー!』
「!!!」
突然頭の中からサリットの声がして、シューは動揺しているようだ。
「シュー!私たち3人が多少離れていても会話ができる精神感応(テレパシー)の魔法をかけておいたんだ。だから、私との会話は、サリットにも伝わっている」
「そういうことか…驚かさないでくれ!!」
『私も、いきなりレイスの声が頭の中から聞こえてきた時には、ちょっとビックリしたわ…』
「…それじゃ、作戦開始と行こうか!」
“ザザッ”
円を描くように走っていた私とシューは、突如進路をラジマの方向に変え、突撃を仕掛けた。
「…先ほどまでのワンパターンな攻撃では、奴はシャドウザバンドを使わないに違いない。私が先に奴に切りつけるから、それで隙ができたところをシューが狙ってくれ!」
「了解!」
「サリットは…」
『分かっているわ。シューの攻撃を防ぐために奴の身体が離散した後、実体化した直後を狙えば良いんでしょ!?』
「うまくいくかは分からない。だが、試してみる価値は大いにあると私は思う」
「やってやるぜ!」
『ええ!』
私と並走していたシューが、数歩だけ私の後方に退く。
「何を考えているかは知らないが…我に小細工は効かぬと言ったはずだ!!!」
“シュン”
“キン!”
咆哮と共に振りかざしたラジマの青龍刀の一撃を、レイスは銀細剣(シルバーレイピア)で防いだ。
「そんなか細い武器で、我の攻撃を防いだ、だと!?」
「武器は見た目じゃない…ワイギヤ教の将軍ともあろう者が、そんなことも知らないのか!?」
刹那、私はシルバーレイピアに魔力を込めた。
“ホウァン…”
シルバーレイピアの刀身が青白く光り、剣そのものを強化すると共に、私自身にも力を与える。
「その魔法は…なぜお前のようなものが、そんな高位魔法を…」
「私が、物質強化(ヒューレフォール)を使えて、そんなに意外か!?」
この世界に存在する魔法のうち、特に物質を変化させる魔法は『高位魔法』であるとされる。
それは、そこに無いものを生み出すより、実在するものの原理や法則をねじ曲げて、違う何かへと変化させることの方がエネルギーを使うからだ。
これから私たちがラジマに使わせようとしているシャドウザバンドも例外ではない。故に、奴の魔法は途方もない魔力を消費するのだ。
「あの時…フォーレストでお前の一撃を食らいそうになったあの時、お前からはそのような力を感じなかった!」
「…いつまでも過去に囚われるのは愚かなことだと、教団の教えにあった気がするんだがな!!」
“ドガッ”
「グワッ!!まっ……またしても……………」
私からの攻撃と、私との会話に夢中になっていた愚かな将軍の、お留守になっていたみぞおち付近に、私は強烈な蹴りをお見舞いした。
“ザザッ”
「今だ!!シューーーーー!!!」
私はラジマがその場にうずくまるのを確認すると後方に退き、シューに攻撃を促した!
第6話 へ続く